旧友とフライフィッシング 2018 夏

 30年前、旧友である彼とは近くのバスが釣れる池で出会った。

隣町の釣りが上手な高校生3人組の一人であった彼は当時からフライフィッシングをしていた。

一緒に釣りに行くようになったきっかけはよく覚えていないが、10代後半から30代になるまで、印旛沼や霞ヶ浦などのバス釣りや、福島や長野の渓流ルアーフィッシング、管理釣り場でフライフィッシング、本流のサクラマスやダム湖のヤマメ、ニジマスの釣りを共にやってきた。

その後は、私も九州へ旅立ち、彼も結婚して子育ての時代が10年近くあり、一緒に釣りに行く回数は極端に少なくなってしまった。

3年前に私が九州から埼玉に帰って来てからは、毎年1~2回、彼とは渓流でフライフィッシングをする。

日帰りで行ける範囲だから、秩父や長野と新潟と時間を合わせては釣行をしている。

既に前回、前々回と釣行記事にしているので
私のブログを読んで頂いている皆様はご存知かとは思うが、始めての方にも説明させていただきました。

さて、今回は夏休みの魚野川水系である。
今年は雨が少なく苦戦するかとは思ったけれど、やはりこの地域は我々にとって特別な場所だから外せないフィールドとなる。
 夜明けと共に迎えに来た彼の愛車であるランクルに乗り込み、排気量の大きなガソリンエンジンのトルクのまま関越道をの上り坂を暫く走ると長い関越トンネルを抜け、越後湯沢にたどり着く。

面白いもので、昔は私がランクル所有して、彼は助手席という形だったが、今では完全に逆転している。

そんな昔話もそこそこで最寄りのコンビニで釣り券を買って支流を目指す。
 何時もの支流に入り、車を止め煙草に火をつける、逸る気持ちこそ無いが、二人であれこれと流れを見ながら釣りを考える。

スローペースで楽しむ釣りである。

やはりというか、流れは渇水、水温も気温も高くイワナの反応は皆無だった。

時折、小さなヤマメがアタックするもなかなか魚の反応は得られない。
 少し離れた寺から、祭りのお囃子が聞こえる。昨年も聞こえていたから釣行タイミングは変わらない。

しかし不思議なくらい魚がいないのである。
 どうした訳か上流の堰堤まで登り詰めたが結局釣れない。

気になるのは水温、明らかに温い。
 コンクリートブロックの隙間にニンフを落とすと小さなヤマメがたくさん出て来るのに、イワナの反応は全く無い。

気がつくと大量のアブに囲まれて鬱陶しい。

アブにチクッとやられてバシッと叩くのだかキリがない、途中で気付いたのだが痒くもならないし腫れもしない。

不思議なことに、この10年以上蚊に刺されても痒くもならないし腫れもしない。同じように私の身体が、炎症反応するのを諦めたかもしれないなと妙に納得してしまった。
 その後は近くに、ラーメン屋を見付けて昼飯。

腹ペコで写真すら撮ることを忘れ、あっという間に食べてしまった。

少し休憩をした後、二人で作戦会議。
本流や里川はダメなので、一気に標高の高い流れを目指す事にした。

叩き上がる釣りをしながらも、ウンともスンとも無い時間が流れて行く。相変わらずアブはブンブン鬱陶しくまとわり付くが、気にするのも面倒なのでそのままだ。

半ばというか、殆ど諦めてただ目の前の流れを黙々と、淡々と釣り上げる。

セミは鳴き、アブは飛び回り、ジリジリと真夏の太陽は頭上から照り付ける。

もう何をしたいのかもわからないくらい。
無意識、無欲のまま、身体は勝手に動いてる感覚だ。

良さそうな、日陰の白泡、石ゴロゴロの流れにフライを落としたその時。

奇跡的にフライにイワナが出た。

これまた無意識にアワセて、フッキング。
「あれれ?ノッタ?!」

何とかイワナをキャッチできた。
こんなに苦労したのも久しぶり。
 次は相方の番、先行してもらい、私は適当な分流とかチャラ瀬を流していく。

しばらくして彼もイワナをキャッチして。
何とか釣りらしくなってきたところで夕方を迎えたが、どうも雲行きが怪しい。

雷雨を避けて、疎水の釣へ変更。
霧が立つ水路を見付けてニンフを流す。
ここで良いサイズのヤマメとニジマスが反応したのだが、上手くフッキングさせる事が出来ずにヤキモキしながら、日没を迎えた。

帰りは何時もの温泉に逃げ込み。
どしゃ降り、稲光の露天風呂で、疲れた身体を投げ出した。

「あ~楽しかった!帰りたくないなあ。。」彼が言う。

「また、来年も来ようや」私が言う。

30年前から、釣りの終わりは変わらない。
楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。

魚がたくさん釣れるに越したことは無いけれど。

苦労してやっとの一匹も、また大きな喜びを得る事が出来るもの。

同じような価値観で、似たようなペースで釣りが出来る仲間が居ることは幸せなことです。

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東洋式疑似餌釣研究所

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