夏の渓流ルアーフィッシング

 私がこの釣りを始めたのは四半世紀前。

当時、渓流のイワナやヤマメをルアーフィッシングで釣ることはまだまたマイナーなジャンルだったので、渓流でルアーフィッシングをする人に出会う事は、地元の関東では皆無だった。

東北や新潟の有名河川に行けばルアーフィッシングをする人を見かける事もあったのだけど、世の中バスブームの真っ只中でルアーフィッシングといえば、ほとんどの人がバスと答える様な時代。

当然ながら、関東のマイナーな渓は昨今の様なプレッシャーが無かったから、ヤマメが釣れずに帰る事など無くて、釣りたい時に行けば幾らでも釣る事が出来たのである。

もっぱら活躍したルアーはスプーンとスピナー。

時折、フローティングミノーや、海用の小さなシンキングミノー等であった。


現代の渓流ルアーフィッシングは、ベイトフィネスであったり、ヘビーシンキングミノーであったり、まだまだ私の知らない釣りかたもたくさんあるみたいだ。
 しかし、今から最新のテクニック等をやろうなんて思えない。

無理に数を釣る必要も無いんだ。

 森を歩き、渓に降りて、沢を登り。

時折ルアーを投げて魚が釣れたらそれでいいと思っている。

 終わる事の無いせせらぎのBGMは、余計な雑念を消してくれる。

あとは己の鼓動と呼吸が聞こえるくらいだ。
 一つ釣り、一つ逃がして、一つの釣りが終わる。
また一つ釣り、また一つ逃がしてやり、また一つの釣りが終わる。

視界の向こう側に行くために目の前の滝を越えて行く、岩を掴み体幹を使って登りあがる。

 すべて終わりと始まりを繰り返しながら、水の流れてくる始まりの場所を目指して歩く。

夏は春のようにたくさんの魚が反応してはくれない。その分テンポ良く進んで行く事が魚に逢う為の近道。

 疲れたら木陰で一休み。
水分を補給しながら火照った身体を静める。

 魚は一匹、一匹、違う模様がある。
釣師にも一人、一人、違う楽しみかたがある。

 日が暮れる頃には、確かに満たされている自分がそこに有ることに気が付く。

満たされた何かが空っぽになった時が来たら。
 
またこの渓へ来よう。

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東洋式疑似餌釣研究所

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